こどもたちが描いた、肥薩線沿線の“お気に入り” — イラストとことばでめぐる、地元の風景とひみつの場所 —
毎日見ている景色でも、だれかの目を通して見ると、少し違って見えてきます。
今回ユースセンターで開いた「イラスト&ライティング講座」では、JR肥薩線沿線地域で暮らすこどもたちが、身近な風景やお気に入りのスポットを、イラストとタイトル、そして短いキャッチコピーで表現しました。
「なんとなく好きな場所」
「いつもの道」
「ちょっとひやっとする裏道」
「夏になると行きたくなる川」
そんな、それぞれの中にある“地元の風景”が、絵と言葉によって少しずつ立ち上がってきます。
ここでは、講座の様子とあわせて、こどもたちの作品をご紹介します。

絵を描く前に、まずは「自分が紹介したい場所ってどこだろう?」を考えるところから。
観光地として有名な場所だけではなく、ふだん歩く道、なんとなく落ち着く景色、友だちとの思い出がある場所など、こどもたちの視点から見た“好き”が少しずつ集まっていきました。
描き方や画材もさまざまです。
色鉛筆、水彩絵の具、アルコールマーカー、絵墨。
同じ地域の風景でも、選ぶ場所も、切り取り方も、色の重ね方も、一人ひとり違います。

作品紹介

『風の音が響く不気味な裏道』
― 1人で行くと、ひやっとする場所 ―
水彩色鉛筆
同じ「地元の風景」でも、明るく楽しい場所ばかりではありません。
少しこわいけれど、なぜか印象に残っている。そんな裏道も、その子にとっては確かな“地元の景色”です。
風の音まで伝わってきそうなタイトルに、その場所で感じた空気がぎゅっと込められています。

『風が気持ちい定番の散歩道』
― 会話がはずむ、大好きな道 ―
色鉛筆、水彩絵の具
だれかと歩くからこそ、好きになる道があります。
風の心地よさや、そこで交わされる会話まで含めて、その道は特別な場所になる。
「定番の散歩道」という言葉に、日常の中にある大切な景色がにじんでいます。

『晴れの日も静かな公園』
― 暇な時、駅に行くと自由に遊べる ―
アルコールマーカー、水彩絵の具
にぎやかすぎず、静かすぎず、気が向いた時に行ける場所。
駅の近くにあって、ふらっと立ち寄れる自由さも、この作品の魅力です。
こどもたちにとっての“居場所”は、特別につくられた場所だけではなく、日常の中にもちゃんとあるのだと感じさせてくれます。

『一息つくと…』
― 私が戻る風景 ―
絵墨、色鉛筆
この作品には、「好きな場所」を超えて、“自分に戻れる景色”という感覚があります。
ほっとしたい時、気持ちを整えたい時、思い出す風景。
短い言葉の中に、その場所との深いつながりが感じられます。

『そうだ、うえむら駅行こう』
― かわいい駅にいやされよう ―
色鉛筆
駅は、移動のための場所であると同時に、気分を変えてくれる場所でもあります。
「行こう」と呼びかけるタイトルには、見る人をその場所へ連れていくような軽やかさがあります。
“かわいい駅”という表現からも、こどもたちらしい親しみのあるまなざしが伝わってきます。

『地元民ご用達 川遊びの聖地』
― 夏だ!あつまれ!横川のひみつきち ―
水彩絵の具
観光パンフレットには載っていないけれど、地元の子たちにとっては特別。
そんな“ひみつきち”のような場所も、今回の大事な主役です。
楽しさやにぎわい、季節の空気まで感じられる、元気な作品になっています。

番外編『絵墨であそんでみた』
きっちり完成させるだけでなく、「試してみる」「遊んでみる」という時間があったのも、この講座のよさでした。
表現は、上手に描くことだけではなく、素材にふれてみることや、思いがけないにじみや線を楽しむことからも始まります。

まとめ
今回こどもたちが描いてくれたのは、いわゆる“有名スポット紹介”ではありません。
毎日の暮らしの中で見つけてきた、自分だけの好きな景色。
ちょっとこわい道も、癒やされる駅も、自由に遊べる公園も、夏のひみつきちも、どれもその子にとって大切な地元の一部です。
イラストとことばを通して見えてきたのは、肥薩線沿線地域の風景そのものだけでなく、その土地で暮らすこどもたちのまなざしでした。
地元の魅力は、外から見つけてもらうだけでなく、そこに暮らす子たち自身が見つけて、言葉にしていくことで、もっと豊かになっていくのかもしれません。